Sunday, March 20, 2005

収穫2005/3/19, 20, review "Off Site Composed Music Series in 2001"

昨日今日の収穫メモ。

-jazz
ONJQ + OE : '03 P-Vine, 2000円 Disk Union 新宿Jazz館2F
川嶋哲郎 / Mambo Montage : '03 EWE, 1200円 Disk Union 新宿Jazz館2F
Art Ensemble Of Chicago / Tutankhamun : '69 Freedom( '74 Black Lion Records盤) LP, 800円 Disk Union 新宿Jazz館3F

-avant
V.A. / Off Site Composed Music Series in 2001 : '02 a bruit secret 2CD, 1400円 Disk Union 新宿本館6F
Pascal Comelade / L'argot Du Bruit : '98 Island, 1400円 Disk Union 新宿Jazz館3F

-rock / pops
ピチカート・ファイヴ / 女王陛下のピチカート・ファイヴ : '89 CBS, 1200円 Book-Off高田馬場北店
AZITA / Enantiodromia : '03 Drag City, 1200円 Book-Off高田馬場北店
Rage Against The Machine / The Battle of Los Angeles : '99 Epic, 1200円 Book-Off高田馬場北店

-black
James Brown / In The Jungle Groove : '86 PolyGram, 1200円 Book-Off高田馬場北店

新宿Unionは昨日、Book-Offは今日の収穫。いくつか感想を書こうと思ったけど、"Off Site Composed Music Series in 2001"のについて結構長く書いたので、今回はこれ一つ。
代々木にあるイベントスペース(Live House?)オフサイトで行われた即興演奏家による作曲作品シリーズ。東京のいわゆる音響系というか、オフサイト系のミュージシャンたちによる2枚組で、まだ1枚目までしか聞いていないけど、その1枚目が衝撃的だった。オフサイト系のミュージシャンは極限まで音数の少ない、しかも聞き取れるかどうかというような弱音で音楽を展開することが特色で、アルバムの中でもミュージシャンの衣服の布ずれの音などがとても良く聞こえるような録音だ。この中で特に古田真理(現在は恵良真理)の作品を秋山徹次、中村としまる、杉本拓(全員アコギ)が演奏している4曲目と、杉本拓の曲を秋山徹次(turntable)とSachiko M (sinewave)が演奏している6曲目がすばらしかった。
4曲目はこのジャンルでは珍しく(恵良さんとしては珍しくないと思うが)調性のある作品で、2つのコードを繰り返し、そっと空間に浮かべていくようなアルペジオと、2本のギターの弓弾きによるノイズのテクスチャーが独自の音響空間を作り出していた。前者は時間的な、過去から現在、そして未来へと続く流れの中で波の様に繰り返されるのに対して、後者は現在、空間に響いている音でしか存在し得ない、一回性を感じさせるものだ。現在、東京の即興シーンでは後者のような演奏はよく見かけるような気がするが、これと前者のような音が結びついた作品は少ない気がする。最近の大友良英の活動などはこれに近い試みかもしれない。
6曲目は本当に少ない音で構成された、確かに新しい音楽と言えるものだ。30分ほどもある演奏だが、その緊張感はまったく揺るぎない。全体の半分は音が鳴ってないのではないか?よく音楽をやっていると休符のことを「音をならさないのではなく、休符を演奏する」というようなことを聞くが、この演奏はそういった次元を超えて、まさに「無音を演奏」している。しかもこの「無音」は厳密な意味での無音ではなく、演奏家が何も音を出さない、という意味である。だからそこから先はそれを聴取する側がどのように聞き取るかの問題として、彼らは彼らの演奏すべきもののみを提示する。それにしてもSachiko Mの出す音は凄い。これはSine Waveという音の素材を選択したときに、自動的に獲得することができた特徴でもあるのだが、まるでこのトラックをかけている僕の部屋がLive会場となったかのような環境を作り出すことに成功している。特に26分すぎ、その音がどこから来ているのかが分からないようなSine Waveの中、もう一つのノイズが耳元(本当に耳元でだ)で鳴りだす瞬間は、本当に不思議な体験だ。そしてこの曲の最後のパートは、やはり「無音」だった。

Tuesday, March 15, 2005

ミラクルシャッフル

僕は音楽家の中ではずいぶん評判の悪いiPodを愛用している。まあ、iPodに賛否両論あるのはわかるが、僕の場合外に音楽を持ち出して聴く時点で、音質がどうとかということはあまり気にしていない。そもそも音楽とほとんど同レベルの騒音が混入した環境で、音質どうこう言っても仕方がない(悪いよりは良い方がいいと思っているが)。しかしさすがにシャッフル機能はあまりにも作品を解体してしまうので、今まで全く使ってこなかったのだが、最近前にも紹介した雑誌「ユリイカ」の中で、むしろこれほどの解体のされ方の中から、音楽に対する聴取のあり方に意識的になることも可能なのではないか、というような内容の記事(沢井妙治「手塚治虫が想像していたような、もっと21世紀らしい音」)を読んで、たまにこの機能を使ってみているようになった。(iPodについてはやはりユリイカの中で大友良英、菊地成孔、大谷能生の対談でも触れられている。また大友良英菊地成孔の日記でもこの話題が展開されている)

僕の場合、意識的に「解体された」音楽を聴いている意識はない。しかし蓄積された音楽の記憶(アーカイヴ)の中から、その作品の意味を完全に、いや不完全にはぎ取られて不意に飛び出すそれぞれの断片は、テレビから流れ出す殺人事件後の血痕とCMのチワワの様に、またはチャンネルを回したりハイパーリンクをたどったりしながら無数の国々を瞬時に飛び回る現代のメディア体験の様に、飛躍する意識の中で意味性を麻痺させながらも、音楽の所有欲を充足させていく感じが何とも現代的で面白い。でも意外に誰のどのアルバムか分からない場合もあって、普段の聴き方の甘さが露呈したりもする。まあ、この辺りで「ああ、こんな曲もあったな」等と感じて楽しんでしまうとまさにメーカーの思うつぼだろう。僕の場合はその「思うつぼ」にちょっとはまって楽しんで見ようかと思ったのだが(もちろん楽しめなくはないが)、やはり基本的にはアルバムを通勤時に聞き返す目的でこれからも使うことになるだろう。

それと面白いのは、ある曲が終了した時点で、次の曲の冒頭が「聞こえて」くることだ。こんなことは別にiPodが出る前から分かりきっていることだが、しかしこの予定調和を乱す中で、何か新しい表現が見えてくるかもしれない。

それでもランダムに曲が選択されていると、面白い「つなぎ」が聞けることもある。さすがに、屋外を歩いている時にロックの後にシェーンベルクの歌曲「月に憑かれたピエロ」が流れた時は厳しかったが(そもそもシェーンベルクをiPodで聞くタイミングもほとんどないが)、今日は結構マジカルな「つなぎ」が聞けたので、「たまにはいいかも」とか思ったりした。そのマジックは次のとおり。

Bill Evans & Jeremy Steig "So What" from "What's New"
池田亮司 "C5::cuts" from "0℃"
Pink Floyd "Nobody Home" from "The Wall"

ま、実はこの組み合わせが面白いから書き始めた記事だったんだけどね。全部のアルバム持ってる人は少ないかもしれませんけど。

Monday, March 14, 2005

ビートルズと芸術論

 芸術とは何か。やはり、「表現すること」こそ芸術の本質であると思うようになった。ここで「表現されるべきもの」は、表現者自身、つまりある個人、または「人間」である。このような僕の考える「芸術観」からは芸能、娯楽は今のところ外れている。わかりやすく具体例を出すと、クラシックは芸術だが、J-Popは違う、ということになる。クラシックにおいてはそれぞれの作曲家、演奏家はその個性をいかに表現するかを問題としているが、J-Popは明らかに芸能、娯楽の分野の文化であり、世の中の空気感、気分、流行を的確に捉え、その中で作家の感情を「伝達」し、「共感を得る」事を最大の目的としている。芸術の分野ではこの「共感を得る」ということに対して意識しすぎることは、どうしても大衆迎合となる危険を多分にはらむため、これを避ける傾向にある。芸術とはある個人(または集団)のオリジナリティを問い、またそれを表現することであり、自分以外の不特定多数に対してアピールすることと、芸術家自身の美意識、問題意識を発揮することはどうしても相容れない部分がある。
 この相反する二つの要素をつなぎ合わせた稀有な存在として、誰もがビートルズを思い浮かべるだろう。彼等は正にこの相容れないと考えられた芸術と芸能をつなぎ合わせる媒質として、そのユーモアとともに個性を発揮して見せた。彼等の作る音楽は、一部それまでにない思われるような和声進行を見つけることができるとはいえ、部分的に見た時に真に革新的といえるような音楽的冒険があるわけではない。たとえばコラージュの手法はピエール・シェフェールやピエール・アンリのミュージックコンクリートによって(あるいはエリック・サティ?)既に実行されていた。ここで重要なのは、彼等が必要としたさまざまな過程を「実践」したことである。彼等の必要とする技術や、アカデミックといえるような手法を、優れたプロデューサーと共に、それまでに考えられなかった形で組み合わせていく過程の中で、彼等にしか表現し得ない音楽の生成プロセスを実践することにこそ、彼等の「芸術家」としての本質がある。
 そう、全ての創作活動は、「実践」こそ最重要な課題である。いくつものテーマやコンセプト、問題意識を「発見」することは、確かに困難であるし意味のあることだが、これを実践することはより重要だ。社会的・経済的に大きな問題を伴うことも多いが、このような障壁を越えようとする意思の中でこそ、芸術がより力を発揮することは過去の例を見ても明らかだ。逆に、このような壁を見つけることがまたコンセプトを発見することにもつながってくるだろう。いずれにせよ、どのような形でも作品を作り続ける意思を持つことが芸術家にもっとも必要な姿勢かもしれない。

Saturday, March 12, 2005

収穫2005/3/11

昨日の帰り、電車が来るまで10分ほどあったので、駅構内の出店でマイルスを購入。850円なり。多分お買い得価格。このころのマイルスは初めて。まだ聴いていないがどうだろう。

Miles Davis / TUTU '86 Warner Bros. 850円 駅の出店


この前買ったDon Cherryは、リヴァーブがかかりすぎてるのが気になるけど、なかなか良いアルバムだった。そういえばこのメンツ、気付いてなかったけどオーネットの"The Shape of Jazz to Come"のオーネットがデューイレッドマンに代わっただけだった。おまけにアルバムの冒頭の曲は"Lonely Woman"。
ついでに、オーネットのアルバムにデューイが参加している"New York Is Now"っていうアルバムは非常に良いですよ。Elvin JonesとJimmy Garrisonというコルトレーンのリズム隊が参加。録音もかなり良く、とくにこのリズムセクションの良さが際立ってます。オーネットはいつにも増してメロディアス。曲もとても良いです。同じメンツで"Love Call"っていうアルバムも出してるけど、こっちはイマイチ。

Tuesday, March 08, 2005

収穫

この前の日曜の収穫です。
-rock/pop
Janis Joplin / Pearl '71 CBS
Joni Mitchell / Hejira '76 Electra

-jazz
Don Cherry, etc / Old and New Dreams '79 ECM
Thelonious Monk Septet / Monk's Music '57 Reverside

jazzの2枚はまだ聞いてません。Don CherryはECMから出てるだけにダメかなって感じはありますが、メンツが良かったので購入。Monkはまあすごくいいでしょう。名盤なんで。
Joni Mitchellは、まあ想像通り。無難によいです。やはり”Blue”を聞いてると、物足りなさはありますが、まあそこはしょうがないかな。”Blue”は良すぎるから。
で、定番すぎますけど、Janis Joplinがめちゃめちゃ良い。これだけ歌に力のある人はそういないですよね。心に直結しているかのような歌声。孤独なたたずまいは透き通り、微笑みながらどこまでも突き抜けている。その心と身体は時代に直結していたのか?やはり飛び抜けた存在を感じ、感動しました。
やっぱりロックは60年代から70年代だな、とつくづく感じてしまいました。80年代以降のロックでロックを感じるのは、ホントSonic Youth位かな。他にもあるのかもしれないけど、少なくとも数は少ないだろう。僕にとってはNirvanaやRadioheadも、この頃のロックに比べるとどうしても「ロック」としてのエネルギーが不足しているように感じてしまう。60〜70年代にはBob DylanやLed ZepperinやPink Floydや、もうとんでもない奴らがゴロゴロしてた。らしい。現代のジミヘンは誰だ?

Get Firefox

Get Firefox

もうだいぶ普及してきて、これから新たに使おうって人は少ないかもしれませんが、一応お勧めブラウザを紹介しておきます。
Firefoxは、Netscapeから独立したMozillaグループがオープンソースで開発している、ブラウザで、軽快な動作とセキュリティが売りです。またタブブラウズ機能、ポップアップ抑止機能など、IEにはない機能も充実しています。「機能拡張」によって新たに追加機能(マウスジェスチャーや開発用ツールなど)をインストールすることもできます。Mozillaは非営利団体の開発集団で、他にもThunderbird(メーラー)などのオープンソースのプロジェクトを運営しています。
昨年の(確か)11月くらいに正式版がリリースされて、IEのセキュリティ不安もあって一気にシェアを伸ばしています。といってもIEの半独占状態は変わりません。

僕はそもそもMicrosoftが嫌いなんですが、なかでもIEは嫌いです。IEの思想は、OSへのバンドルや高額の和解金を使ってなり振り構わずシェアを獲得し、独自仕様によってIEでしか表示できないWEBページを作らせ、社会がIEに依存するように仕向ける、というものです。なのでw3cによって策定されているCSSなどの標準機能に対するバグは現在普及しているブラウザの中ではダントツのようです。
しかもいつまでたってもセキュリティに対する意識の低さは変わりません。これには専門家も首を傾げるほどです。

というわけで、こんなひどいブラウザの独占状態をなるべく是正すべく、皆さんIE以外のブラウザを使用しましょう。タブブラウザとして広く使われているSleipnirやDonutシリーズ(DonutPなど)などはIEコンポーネントを使用しているため、事実上IEと変わりません。(SleipnirのサイトをみたらレンダリングエンジンとしてGeckoを使用できるらしい。そうであればIEではなくなる)

えーと、以上はWindows使ってる人の話ね。Mac版もありますけど、僕個人としてはSafariのほうが好き。動作は(特に起動が)Safariの方がだいぶ速いです。MozillaでMacというと、Caminoっていうブラウザも出てますが、使ったことはありません。こっちはCocoaみたいです(Firefoxは違います-多分Carbon)。

SuperCollider3

最新版の実行ファイルをダウンロードしようと思って、久しぶりにSuperColliderのサイト見に行ったらなんと、Windows版がリリースされてました。Freeなんで、興味ある人はチェック!もちろんMacOSX版もあります。

SuperColliderは音響合成に特化した、文字ベースのプログラミング言語。完全なオブジェクト指向で設計されていて、比較的最近OSX上で動くSuperCollider3が開発されていました。SC2との違いは、SC3はクライアントサーバーシステムになっており、音響合成を行う部分(サーバー)と、それをコントロールする部分(クライアント、またはアプリケーション)が完全に分割されていて、これらはOSC(Open Sound Control)というプロトコルで通信します。このプロトコルはMax/MSPやPDなどでもサポートしているので(Maxの場合、エクスターナルオブジェクトが必要、PDは知りません)、これらのアプリとも通信できます。UDPの上位プロトコルなので、IPアドレスとポート番号が外から見えていればインターネットを介したネットワーク上で遠隔通信することも可能。
言語的にはLISP, Smalltalkに近い・・・と思う。そう言われていた気がする。C++やJavaにも近いといえば若干近い。括弧の使い方がLISPっぽいのだろう。LISPはやったことがないのでわかりませんが。
インタープリタ言語で、LiveCodingということもできます。呼んで字のごとく、書いたそばから音を鳴らせるぞ、ということですね。Liveで即興に使ったりできるようです。これはJITLIBというもので実現するらしい。今月出版されたユリイカに若干サンプルが出てます。というか、これを見て今回最新版を落とそうと思ったんですよね。全部はまだ読んでませんけどこの号、ポスト・ノイズということを特集していて、非常に面白いと思います。SuperCollider以外にもWeb上のリソースについていくつか紹介されていたので、またここでも取り上げたいです。
話がそれましたが、SuperColliderにはGUIなども簡単に作れるようなAPIが用意されています。音響合成/分析用のアプリなんかも開発できるでしょう。FFTなんかもすでに実装されているので。

私、そもそもSuperColliderは使えてないので詳しいことはわかりません。あんまりドキュメントも整備されてないので、興味ある人は気合入れて勉強しないと良くわからないかも。興味がある人は以下のページが詳しいです。

tn8's SuperCollider homepage  数少ない(唯一?)日本語SuperCollider紹介サイト。サンプルコードも公開されてます。

音響表現ワークショップII [パフォーマンス] 2003  多分、多摩美の講義用資料。Max/MSP, JitterとともにSuperColliderのチュートリアルもあります。