Monday, December 10, 2012

ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で』

ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で』を読んでいる。タイトルが示すほどは福島のことに固有の論ではなく、もっと射程の広い文明論。最後まで読んでないから詳しい内容について云々するつもりはないけど、一言だけ。

表題の論考は原子力を中心にした技術論で、現在の技術あるいは文化は、目的と手段、あるいは自然(ピュシス)と技術(テクネー)という二項対立の図式が崩れてきて、その区別のつかないというか、手段そのものを目的とするような手段、あるいは自然に影響を与えることで、それと不可分になってしまう技術という状況を描き出している。これってまさにポストモダンじゃないの。

で、ナンシーが提唱するのは未来について考え「ない」ことである。未来を指向するのではなく、徹底的に現在を指向すること。これは僕の理解では、来るべき未来という一つの理想を措定したときに、そこから漏れだす無数の可能性を縮減してしまうことが問われているのではないかと思う。逆にナンシーは「現在において思考すること」を問う。自らの目的が現在において、あるいはその存在において果たされている状態を常に実現すること。我々にできることはそれしかないし、その「現在」においては今と終わりが結びつく。というようなことを読むにつけ、やはりナンシーもニーチェ派なんだな、と感じた。これって永劫回帰ですよね。

書きたかったのはそれだけ。

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