Friday, May 02, 2008

3月の思い出

3月に仕事の谷間があって、比較的長い休暇を取ったのだが、そのときに色々見たりしたものをまとめておく。

『アレコ』/『新作・世界初演』/『毛皮のヴィーナス』


『アレコ』/『新作・世界初演』/『毛皮のヴィーナス』

佐々木敦のブログで知った、ベルギーのダンスデュオ。音楽をクリスチャン・フェネスが担当していた。
非常にすばらしいダンスで、驚き、感動した。特に冒頭の『毛皮のヴィーナス』がすばらしかった。女性のソロ作品で、最初ダンサーは毛皮をかぶり、グロテスクな未知の生物のような動きをしている。両手がまるで砂の惑星に出て来る大ミミズのようであり、それぞれがお互いに噛み付きあう。そのような非・人間から、女性が、のたうちながら生まれて来る。しかもその女性は両の足を大きく開き、股間をまっすぐ客席の方に向ける形で生まれて来る。ここで、生まれて来る女性=産む女性というような生産の循環構造のようなものが示されていたように感じた。

また、最後のデュエット『アレコ』もすばらしかった。特に男性が女性を殺してしまってから、男性が女性に噛み付きながら(カニバリズム)踊るシーンは白眉で、ちょっと前のことなので記憶が相当に合間なのだが音楽はなっていなかったように思う。少なくとも僕の記憶の中ではそうで、その無音状態の中で二人のダンサー、愛すべき人を殺した男と、死んだ女が、舞台の上で絡み合う様に、しかし悲劇的に舞う様子には落涙しそうになるほどの強度があった。


知られざる鬼才 マリオ・ジャコメッリ展


知られざる鬼才 マリオ・ジャコメッリ展

東京都写真美術館で行われている「知られざる鬼才 マリオ・ジャコメッリ展」。すばらしい。かなりの部分が白と黒に塗りつぶされる独特の印刷技術で、生と死を捕まえ、フィルムに定着させている。この展示については「アラザル」の原稿でも触れているので、そちらを参照いただきたい。展示は2008/5/6まで。

公式のサイトで、作品が閲覧可能。


シュルレアリスムと写真 痙攣する美




ジャコメッリ展と同時開催しているシュルレアリスム写真展。ジャコメッリがすばらしかっただけに、ちょっと印象が薄い。冒頭の夜の町の写真と、最後に展示されている昆虫や植物の超至近距離からの接写など、気に入った作品も多くあった。


ジャック・リベット監督「美しき諍い女」




ジャック・リベット特集、日仏学院にて。うーん、ちょっと難しいなぁ。映画は難しいです。面白かったですけど、ちょっとコメントできるほどわからなかった。という感じ。


ペドロ・コスタ監督「骨」他




ペドロ・コスタ特集、アテネ・フランセにて。陰鬱な世界をそのまま写し取り、その映像の美しさ、黒の存在感、録音された音に対する感性など、多くの優れた才能には恐れ入る。


ルノワール+ルノワール展




画家の方のルノワールを中心に見た。さすがに巨匠だけあってすばらしく、やはり言われているように光の表現が見事。映画監督のジャン・ルノワールについては、不勉強で映画を見たことが無い。ただ、広告にも使われている若い女性がブランコを漕ぐシーンは、きわめて短い映像のみが繰り返されていただけだが、その映像詩的な美しさは感動的だった。


モディリアーニ展




プリミティブ・アートに傾倒した時期(それ以前も)を含む、画家としてのモディリアーニを紹介し尽くすような展示で、充実していた。年代順に並べただけかもしれないが、モディリアーニの興味の在処と、プリミティブアートが実際に彼の後期(といっても30代だが)の作品でどのように機能しているかがわかって、構成も良かったと思う。背景や衣服などが描かれている箇所のテクスチャーの平坦さと、顔の陰影のバランスなどが気に入った。


アーティスト・ファイル 2008―現代の作家たち




好きな作家とそうでもない作家とがやはりいた。特に良かったのは、エリナ・ブロテルス、佐伯洋江、さわひらき。エリナ・ブロテルスについてはジャコメッリと同様「アラザル」で書いたので、ここでは割愛。このサイトで作品が見れる。佐伯洋江はシャープペンをつかった異常に細かい線で構成され、洗練された日本的な絵画を制作していた。さわひらきは6つの壁にプロジェクターで映像を投影するインスタレーションを展示。それぞれの映像はきわめて緩慢に変化していく。その変化の時間性がテーマとなっていたように思う。全体として非常に美しい作品だった。


以上、一度に書くと疲れる・・・

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