Thursday, November 10, 2011

さらば青春の光

ずいぶん長いこと、あなたとは一緒だった。

どこへ行くときも、いつもあなたはわたしのそばにいた。
だから、あなたがそこにいること自体、当然のことだと思っていたし、そんな意識さえないままに暮らせるぐらい、空気ほどにも身近な存在だった。
だから、今までわたしが自分で見ていると思っていたようなことも、実はぜんぶあなたを通して見ていたんだってことには、ようやく今頃になって気がついたんだ。
そして、あなたといる世界が、すべてではないっていうことにも。

あなたといた時間はもうすっかりわたし自身の一部になっているし、いま、あなたなしで出かけてみると、まわりの人もあなたがいないことについて訊いてくる。そう言われるたび、あなたがどれだけわたしという人間と溶け合っていたかって、思い知らされる気がする。

でも、あなたなしで見る世界は、やっぱり今までとは違って見えるよ。
あなたが私に見せるために用意してくれた枠の外側にも、こんなに広い視界が広がっているなんて、まあ、知ってはいたけどさ、やっぱりすごく新鮮に感じる。 だからこれからは、あなたなしでもわたしはやっていけるっていうことを、自分で確かめていこうと思う。それはさみしいことだけど、前進だと思ってる。

これまでどうもありがとう。
あなたのことは忘れない。


というわけで、レーシックしました。
さようなら眼鏡。

Thursday, November 03, 2011

アラザル vol.6

アラザル vol.6、完成しました! 本日11/3(水)の第十三回 文学フリマで先行発売します。

  • 日時:11/3(祝)11時〜16時
  • 場所:東京流通センター 第二展示場(E・Fホール)
  • ブース:アラザル カ―19
  • 価格:500円

僕は今回、「管理/邂。逅」というタイトルで、軽いエッセイを書きました。 とはいえ、テーマは記号と美学でしょうか。そんな大したものではないのですが。 ぜひお手に取っていただければ。 アラザルのブログで、冒頭の一部が引用されているので、ここでも紹介しておきます。

あるとき、僕は仕事でプログラムを書いていた。そして一通り区切りがついて、今書いたプログラムの動作を確認すると、画面上に「邂。逅」という文字が浮かび上がった。「邂。逅」? 僕はプログラムの中にそんな言葉を入力していない。しかも、真ん中にある「。」はなんなんだ。まったく想定していなかった言葉に襲われ、僕の視界にチカチカと火花が瞬いた。豆鉄砲をくらった鳩よろしく、思考が一瞬途切れる。もう一度ディスプレイに焦点があうと、改めてこの謎の言葉と向き合い、小さく笑う。そして「なんだこれ」と呟いた。ちょっとむずかしくて、口語では滅多に使わないこの「邂逅」という言葉。そこに足をもつれさせる小石のように転がる句点。脱臼させられた厳めしさのような、ちょっとシュールな光景。

書店等での取り扱いについてはまた告知します。よろしくどうぞ!