Monday, July 18, 2005

ONJO - Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra

Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra

音響とか、即興とか。東洋的とか、西洋的とか。そういった要素をイディオムとして内包しつつも、完全にそこから自由である音楽。大友がCathod / Anodeからfilamentを経てたどり着いた一つの形がここに結実したのだろう。これまでの大友の作品と比べ、際立って美しく、楽園的なまでに自由で、強い。言葉そのもの意味での現代音楽の、一つの金字塔と呼べる作品ではないだろうか。

1曲目のeurekaは、その典型と言えるような作品だ。前半は静謐とさえ呼べるような演奏で、guitar, vibraphoneとともにカヒミの歌が響く。カヒミの歌声はその音の響きに最大限の意識をおいている点において、極めて音響的だ。後半ではAnodeで見せたような、各演奏家のが作り出すサウンドテクスチャーが、互いを邪魔するのではなく、また遠慮するのではなく、それぞれ自身が独自に築き上げた世界が、全体としてONJOのみが作り出しうるストラクチャーを構成している。Areaの"1978"などで感じる楽園的要素をここにも感じる。大友の平和主義が表現されているとも言えるだろう。

その他、3曲目のBroken Shadowsなどではコラージュ的な手法も使われるなど、大友の集大成としてふさわしい内容となっている。大友は自身でPro Toolsを使ったマスタリングを行っているらしい。そのできばえも見事で、それぞれの楽器の音色などは他で聴くことのできない様な質感だ。

また、海外の即興ミュージシャンの演奏もこのアルバムの聴き所の一つだ。特にtrumpetのAxel Dornerと、saxのMats Gustafssonの演奏は(一度生で見ていないとどの音が彼らの音か分からないかもしれないが)、それぞれの楽器から想像する音とは全く違う音を作り出していて、またそれが素晴らしい。機会があれば彼らのアルバムやライブを聴いてみてほしい。

果たしてこれをJazzと呼ぶべきかどうかは聴く人それぞれにまかせるが、Jazzを通過した音楽の、頂点の一つであるということは言えるのではないだろうか。多くの音楽ファンに聴いてほしい作品だ。

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