Monday, May 05, 2008

クラリネット音楽祭

先日「20th Century Music For Unaccompanied Clarinet」を聞いたのをきっかけに、自宅にて現代クラリネット曲音楽祭を開催(笑)。

20/21 - Boulez: Repons, Dialogue De L'Ombre Double / Boulez, Ensemble InterContemporain





1曲目の「repons(レポン)」が有名だが、2曲目のクラリネット曲「Dialogue De L'Ombre Double」も良い。IRCAMというフランスにある現代音楽における電子音楽の総本山で、所長のピエール・ブーレーズの曲を本人が指揮するという(Dialogue De L'Ombre Doubleは独奏曲)、サラブレットな録音。1曲目の演奏はEnsemble InterContemporainというこれまたサラブレットたち。肝心の2曲目のクラリネット曲は、本来なら前後左右合計7カ所に設置されたスピーカーを使って、目の前で演奏されているクラリネットの音をリアルタイムに音響処理し、聴衆の周りをそのクラリネットの音が駆け巡るような感じ、であると思われるのだが、CDに録音されているのはステレオ2chのみなのでその全貌を再現することはできない。ただ、様々な音域でのトリルを繰り返しながら音の定位を次々とかえていく様はスリリングで、しかも音自体がとても良い。作曲された85年という時代性も考えると、(当時)相当高性能なコンピューターを使用していたことが伺える。
このアルバムは名盤なので、機会があれば是非聞いてみるべき。

Stockhausen: Bass Clarinet & Piano



Stockhausen: Bass Clarinet & Piano

シュトゥックハウゼンのピアノとバスクラリネットのソロとデュオを集めたアルバム。所々にコンピューターによる音響処理も入っており、それがさりげなく良い。特に一曲目のピアノソロは断続的に続く和音の連打に、コンピューターの音響がまとわりついて来るその響きがとてもスタイリッシュ。6曲目以降に収録されているデュエット曲「TIERKREIS」は、彼の作曲作品の中では旋律がはっきりしていて取っ付き易い作品だ。冒頭などは「展覧会の絵」のようである。また途中でトイピアノなども使われている。トイピアノがはいるととたんにジョン・ケージっぽくなる。最後あたりで一瞬感動的なメロディをバスクラがグロウ気味に吹いたり、あるいはパーカッシヴなあの奏法(呼称がわかりません)をするあたりなどはデビッド・マレイとか、フリージャズ系の香りも。何にせよ、かなり聞き易い作品であるし、シュトゥックハウゼンの入門には向かないかもしれないが、しかしもしかしたら現代音楽の入門にはなるかも?まあ僕自身がまだ現代音楽に入門したとは言えませんけれども。

Tashi / メシアン:世の終わりのための四重奏曲



Tashi / メシアン:世の終わりのための四重奏曲

タッシの名盤。タッシはこの曲を演奏するために結成された現代音楽カルテットで、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノ、チェロという不規則な編成をとる。アルバムのライナーにあるメシアン自身の解説を読むと相当にキテレツであり、例えば「ピアノはブルー= オレンジの和音でカデンツを奏し、そのはるかかなたのカリヨンの響きでヴァイオリンとチェロの単旋聖歌ふうのレチタティーヴォを囲む。」といった具合。メシアンは相当に神秘主義的な作曲家であり、解説を読んでいるとかなりスピノザ的な感じを受ける。この曲ではクラリネットは中心という訳ではないが、第三楽章「鳥たちの深淵」などはクラリネットソロである。この楽章では様々な音高でのトリルが特徴的。メシアンは鳥の鳴き声を採譜することに執着したことで有名だが、昔から木管楽器(主にフルートが多いが)のトリルは鳥の鳴き声を表すことが多い。特にクラリネットという楽器は木の管に開いた穴を直接指で押さえるという非常に構造的にシンプルな部分があり(しかし両小指に割り当てられたキーは異常に多いのだが)、このような構造を持った木管楽器は今ではリコーダー類とピッコロくらいしか思いつかないが、そのクラリネットのトリルは木の穴を押さえ、離すというフィジカルな運動、木と指の接続/離散の過程がそのまま発音に結びついているため、その運動性を音色として楽しむことができる。クラリネットに於ける鳥の鳴き声の表現ということではエリック・ドルフィーが思い浮かぶが、どちらかというと彼の場合はやはりフルートの演奏の方がより小鳥のような飛翔感がある。本作ではそのようなトリルを含めたクラリネットの旋律が、鳥の歌声の旋律をなぞっていることが非常に良く現れているので、注意して聴いてみると面白いだろう。その他、クラリネットを中心にせずとも非常にすばらしい楽曲であり、チェロとピアノのデュオなど、優美で官能的とも言えるような美しい旋律を聴くことができる。

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